三重県津市にある「みえぎょれん」のサイトです。「みえぎょれん」や三重の海の紹介、お魚を使った料理レシピも掲載してます。

 

2023年度・第45回 三重県海の子作品展 審査講評(三重県美術教育研究会 猪 泰介)

 第45回三重県海の子作品展に入賞された皆さん、おめでとうございます。
また、応募していただいた全ての児童生徒の皆さん、海への様々な思いのこもった素敵な作品をありがとうございました。
三重県は、海との関わりがとても深く、生活の中にも海との歴史がたくさん根付いている地域です。今年の作品は、そういった海との
関わりから思いを膨らませたり広げたりして表したであろう作品がたくさんありました。

【小学生の部】
 森田汀瑠さんの「立派なブリあがったよ」は、活きのいいブリの水揚げの様子が描かれています。ブリの激しい動きが水飛沫を通じて
伝わってきます。また、かごの細かい網目の様子やブリの緑の豊富な色合いの表現も見事です。後藤美杏さんの「漁師さんの一休み」
は、港で休んでいる漁師さんの様子を優しい表現で描いています。よく見かける港の風景を切り取って描いたかのような作品ですね。
畑紅玲愛さんの「大きないせえび」は、大きな伊勢海老とお父さんの船がとても大胆に描かれており、紅玲愛さんの思いが絵にしっかりと表れています。この二つを描きたいという思いを真っ直ぐに紙にぶつけたのでしょう。山下稜太さんの「願いをのせて」は、カラフルな旗、海面の様子、願っている人々、一つひとつとても丁寧に描かれており、人々の願いを表しているかのような明るい作品に仕上がっています。植村優月さんの「黒い海の中には楽しくおよぐ魚たち」は、中央に描かれたサメの色が見事です。パレットで繰り返し色を探して自分の納得のいく色を探したのでしょう。周りに描かれた魚たちも特徴をよく捉えられています。細川彩乃さんの「青い海のぼうけん」は、愛らしい海の生き物が楽しそうに泳ぐ様子が描かれています。宝物を机の上に並べているときのような楽しい表現への気持ちが伝わってきます。

【中学生の部】
 榎本エマさんの「ハラソ祭り」は、インパクトのある構図と赤の扱いが目を引くとても力強い作品です。船の模様や旗のゆらめき、着物のしわなど、難しい表現個所を丁寧に仕上げていますし、そのこだわりがこの絵に説得力を持たせています。惹きつける絵とは、このような絵のことですね。福田智那さんの「夕景」は、海と太陽のコントラスをとてもドラマチックに描いています。少ない色味で、質感も量感も表していますね。また、影の中の船、海に広がる影、山の影などの影の活かし方も見事です。内山颯埜さんの「のりの養しょく」は、水彩絵の具の透明感を活かした技法で描かれています。水平に奥まっていく海に、たくさんの杭が垂直に並んでいる美しい風景は、自然の海と人工の養殖との調和を感じられます。石川雅さんの「今日は大漁」は、海の上で網を引き上げる様子を描いた作品です。船を傾かせたり暗めの色を使ったりして、網が重たい様子を表しています。つまりはたくさんの魚がかかっている様子を想像させられる絵です。石倉成実さんの「鯛」は、真っ赤な鯛をしっかり描き込んでいる作品です。特に鯛の鱗は様々な赤色を使っています。また、鯛の口や額の表現も見事です。成実さんにとって納得のいく作品に仕上がったのではないでしょうか。濱地悠成さんの「祖父の仕事」は、フォークリフトで荷物を運んでいる様子です。港と海の背景に水色と白のフォークリフトが映えますね。立体的に描こうと工夫している様子から悠成さんのこだわりが伝わってきます。

 絵に表すときに大切にして欲しいのは、あなたの心にある「表したい思い」です。描きながら、その思いをどのように表現するか、夢中に探してください。どんな綺麗な絵よりも、あなたの思いが伝わってくる絵が、私は素晴らしい絵なのだと思います。