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平成22年度・第32回 三重県海の子作品展 審査講評(三重県美術教育研究会 辻村 岳)

本年度で32回目を迎えることとなりました「三重県海の子作品展」ですが、今年も海の生き物や海で働く人たちへの親しみがこめられた数多くの作品に囲まれつつ審査を行わせていただきましたことについて大変うれしい気持ちを感じています。今年度においては、小学校1,046点、中学校279点の参加がありましたが、海で働く人たちの様子を正確に表現しようとしたものや、海の生き物のいきいきとした様子を現実の風景と心のイメージと組み合わせてとらえようとしたもの、あるいは夏の海を家族と過ごした楽しい思い出を心のままに素直に表現したもの、などが数多く見られました。

小学校の部では、明るい色調を用い、海の生き物や海で働く人たちの様子を極めてポジティブに捉えつつ、大胆かつ豊かな色彩で表現した作風が数多くみられ、子どもたちの表現の柔軟さとすがすがしさに何度も感心させられました。
小学校の部で知事賞を受賞した志摩市立片田小学校3年生の奥村颯汰さんの『海を大事に』は、海で作業をする人たちの様子がしっかりと描かれており、落ち着いた色調と安定感のある構図の中で、船の動いている様子などが巧みに描かれています。まるで、ここを通りがかった一人の旅人が海で働く人たちの日常風景に感銘を受けて、作業の瞬間をスナップ写真で切り取ったのではないかと思わせられるような見事な作品となりました。

中学生の部では海の恵みや魚の収穫をテーマに、人々が漁港や船上で活気にあふれつつ作業を行っている様子などを写実的にとらえた作品が目立ちました。また、全体的に落ち着いた色調でモチーフをしっかりと観察し、丁寧に描ききった作品が多く見られました。
中学校の部で知事賞を受賞した尾鷲市立尾鷲中学校1年生の内山 耀さんの『地元ガツオの水揚げ』は、港に水揚げされた大量のカツオが作者独自のタッチで描かれ、同時に汗を拭いながら忙しそうに作業する漁師さんの様子がしっかりと捉えられています。ともすると、海の色や作業する人の作業着、魚を入れるかごや主題であるカツオそのものが同じような色調で表現されがちなモチーフであるにもかかわらず、見る者に退屈さを全く感じさせることなく、クリアな雰囲気の中でそれぞれのモチーフの違いを明確に描き分けることに成功した見事な作品となりました。

知事賞の各作品については以上の通りですが、各賞を受賞されたみなさんの作品はそれぞれに、自分の感覚の中にある海というものについて、豊かな感性でその思いを画面に投げかけながらも、見る者に対しては随所に海への憧れや海で働く人々への尊敬の念を表現していると感じさせられる誠にすがすがしい作品ばかりでありました。

今後もこの作品展がさらに発展し、継続されることを願うとともに、子どもたちが素晴らしい作品を生み出す元となるこの三重の海が、いつまでも豊かでありますことを祈りつつ、今回の講評を終えることにします。