2025年度・第47回 三重県海の子作品展　審査講評（三重県美術教育研究会　猪 泰介）

第47回三重県海の子作品展に入賞された皆さん、おめでとうございます。また、応募していただいた全ての児童生徒の皆さん、海への様々な思いのこもった素敵な作品をありがとうございました。

　今年の作品には、海との関わりを子ども自身の視点で捉え、心に浮かんだ思いや感動を素直に表現したものが多く見られました。それぞれの作品からは、子どもたちの豊かな感性と、海に寄せる温かなまなざしが感じられるとともに、大人の価値観を超えてくるような表現の力に改めて心を動かされました。

　中井美結さんの「大漁だ！！」は、大きな網で魚を掬い上げる人たちの姿を描いた迫力ある作品です。朝焼けの海を背景にした奥行きのある構図、中心の魚に視線を集めるロープの描き方、そして網の一本一本に込められた丁寧な筆致など、見どころがたくさんあります。三橋湊仁さんの「ぱぱのあおさのりたいりょう」は、お父さんのあおさのり漁を楽しそうに描いています。船の上に積まれたあおさや、海いっぱいに広がる緑のあおさが生き生きと表されています。海を見つめる人物の表情からも、誇らしさと温かい家族の絆が伝わってきます。中井杏美さんの「ぶりだ！大漁だ！」は、大きな網にぎゅうぎゅうに詰まったブリを描いた作品です。網の描き分けや海面の表現が見事で、人物や船も含め、それらを素直に表現しているところが作品の魅力をいっそう引き立てています。津田結依子さんの「夏のおわりの港」は、手前から遠景までの海の描き分けが美しく、緑がかった海面や船の白が夏の終わりの静けさを感じさせます。結依子さんの心に残った海を思いながら表現したのではないでしょうか。中平咲綾さんの「海のそこでかくれんぼ」は、ヒラメの擬態に興味をもって描かれたのでしょう。微妙な色の違いや陰影の工夫によって、海の底に溶け込むような姿が巧みに表されています。周囲の明るい生き物との対比も楽しく、見ていて飽きません。仲野琴子さんの「きれいな真珠ができますように」は、真珠貝の核入れの様子を柔らかなタッチで表しています。題名に込められた願いが、作品全体から静かに伝わってきます。以上の作品が小学校の部での入賞となりました。

　前田泰志さんの「出航の合図～願いの帆」は、風にはためく色とりどりの大漁旗が印象的です。鮮やかな色彩と落ち着いた背景との対比が美しく、描きたい思いが画面全体にあふれています。中村日鞠さんの「豊漁の魚河岸」は、細部まで丁寧に描かれた力作です。特に青いかごの表現は秀逸で、たくさんの色が使われながらも全体が調和しており、真剣に作品と向き合った姿勢が伝わってきます。吉田羽藍さんの「三重の漁船」は、画面いっぱいに描かれた漁船の白が印象的で、光の当たり方や陰影の変化が見事です。船首の人々や大漁旗の揺らめきからは、船とともに生きる人々の息づかいが感じられます。田中大樹さんの「夜の海照らす、満開の花火」は、花火を通して夜の海を新たな視点で描いた作品です。海面に映る光や、大胆な構図の中に浮かぶ船の黒が印象的で、幻想的な美しさがあります。三好一加さんの「完璧な火入れ―よこわのタタキ―」は、切り身の質感や鮮やかな照り返しの表現が見事で、新鮮なよこわの瑞々しさと大葉の緑が食欲をそそらせられる味覚にも訴える作品となっています。西井うららさんの「牡蠣むき」は、一つ一つの牡蠣を丁寧にむく様子を描いた作品です。服のしわや濡れた板目の描き方にも工夫が見られ、作業の臨場感がよく伝わってきます。以上の作品が中学校の部での入賞となりました。

　この作品展を通して、海と共にある三重県民の心と暮らしが、これからも豊かであり続けますことを願うとともに、多くの命を育む海への感謝の気持ちを込めて、審査の講評といたします。