三重県津市にある「みえぎょれん」のサイトです。「みえぎょれん」や三重の海の紹介、お魚を使った料理レシピも掲載してます。

 

2021年度・第43回 三重県海の子作品展 審査講評(三重県美術教育研究会 猪 泰介)

 第43回三重県海の子作品展に入賞された皆さん,おめでとうございます。また,応募していただいた全ての児童生徒の皆さん,海への様々な思いのこもった素敵な作品をありがとうございました。 三重県は,海との関わりがとても深い地域です。毎日の食事や風景,潮風や海の香りなど,身近な生活の中に海やその恵みを実感することができます。今年の作品は,そういった海との関わりから思いを膨らませたり感じ取ったりしながら描いたであろう作品がたくさんありました。

中尾樹さんの「色とりどりの大漁旗」は,題名通りの色とりどりの大漁旗が何枚も風になびく様子を描いています。丁寧に描かれた大漁旗からは,漁師さんたちの込めた願いが溢れ,勇ましさや力強さが伝わってきます。坪田紗依さんの「だいすきな人たちが働く漁港」は,フォークリフトを運転する様子やカゴを洗う様子に加え,桟橋に来た海鳥なども描かれています。きっと紗依さんが実際に見て感じ取った漁港の様子を描いたのでしょう。中井美結さんの「大漁で帰ってきたよ」は,大漁旗を掲げて帰ってきた漁船が港に入ってくる様子を描いています。美結さんが,この景色をとてもうれしい気持ちで見ていたことが伝わってきます。福田智那さんの「海」は,ウミガメを中心にサンゴや魚といった海の生き物を淡い色で描いています。差し込む光を見上げる構図で描くことで海の広大さや神秘性が表しています。石倉成実さんの「烏賊」は,深い海の中を照らすイカを点描で描いています。イカの光に加え,透明感や質感まで伝わってきます。目の描き分けも見事です。植村優月さんの「はなやかな海べの生き物たち」は,岩場の海の生き物を特徴を捉えて描いています。よく見ると,ちゃんと近海の岩場に生息している生き物ばかりで,説得力のある絵になっています。以上の作品が小学校の部での入賞となりました。

奥村実央さんの「あぶり作り」は,あぶりの一匹一匹を丁寧に描いた作品です。画面の多くを占めているあぶりからは,燻された時の香りが見ている側にも漂ってきそうです。色合いも美しく,視点が自然と働いている女性に動きます。あぶり作りの文化や伝統を残す大切さも伝わってきます。山本莉夢さんの「港で輝く大漁旗」は,大漁のブリが揚がったときの忙しそうに働く人々の姿を描いています。一人ひとりの姿勢や道具や表情から市場の活気ある様子が伝わってきます。天白琉偉さんの「船と港」は,白い漁船を難しい角度で丁寧に描いています。船の白色の扱いや海面の陰影の表し方に目を引かれます。郭あなんさんの「輝く漁港」は,正面から描かれた船を中心に淡い色使いで描いています。海,空,雲,そして船の影と,青色の使い方が見事です。宮﨑琴愛さんの「漁の後のイワシ雲」は,イワシ漁とイワシ雲を重ねた絵になっています。イワシ雲を見てイワシ漁のことが思い浮かんだのでしょう。ユニークな作品です。山本快さんの「あぶり」は,作業の様子を遠近に描き分けています。真っ赤に燻された魚がとても美味しそうです。以上の作品が中学校の部での入賞となりました。

この作品展を通して海と共にある三重県民の心と暮らしがいつまでも豊かでありますことと,多くの命を育む海に感謝の気持ちを込めまして審査の講評と致します。