三重県津市にある「みえぎょれん」のサイトです。「みえぎょれん」や三重の海の紹介、お魚を使った料理レシピも掲載してます。

 

2020年度・第42回 三重県海の子作品展 審査講評(三重県美術教育研究会 後藤 みちる)

 第42回三重県海の子作品展に入賞された皆さん、おめでとうございます。
 今年は思いもよらなかった新型コロナウイルスの流行により、不要不急の外出制限や夏休みの短縮等で自由に海へ出かける機会が失われる中、三重県各地から変わらぬご応募をいただきありがとうございました。海の子展の審査をさせていただきながら、改めて海の持つ力強さと、海を愛する三重県の子どもたちの絵に元気をもらいました。

 小学校の部で三重県知事賞を受賞した尾鷲市立尾鷲小学校5年の石倉成実さん『飛び魚』は、飛び魚が水上に飛び出し胸ビレを広げて滑空する姿を豪快な水しぶきとともに描きました。背の鮮やかな濃青色と水面の透明感のある青色、そして真っ白な水しぶきが美しい作品です。
 また、三重県教育委員会賞を受賞した尾鷲市立尾鷲小学校5年の森田都月さん『ほれ!おいしいぞ』は、水揚げされたばかりの伊勢エビを手に取る漁師と港の情景をていねいに描きました。たくさんの色を使って表現された殻や長く伸びた鋭い触覚などから、伊勢エビに対する作者の関心や愛情が感じられました。
 中学校の部で三重県知事賞を受賞した尾鷲市立尾鷲中学校3年の中﨑ちひろさん『祈り』は、まるで写真のような正確な描写と、漁師の心の声まで描き出そうとした思いが表現されています。その素晴らしい描写力は、海の中にいる魚たちや水面を渡る潮風の香りまでも感じさせてくれます。
 また、三重県教育委員会賞を受賞した伊勢市立五十鈴中学校1年の山本ひなたさん『豊かな海』は、海の中を魚たちと一緒に泳ぐ子どもたちの姿がのびのびと描かれています。まるで自分も海の中にいるような気持ちになり冒険心をかきたてられました。

 小学校の部では、キハダマグロが群れをなして悠々と泳ぐ姿を、鮮やかな色彩とともに描いた片原和音さんの作品、海で仲間とともに働く父の姿を生き生きと描き、大漁の鰤に驚き喜んだ様子が伝わる中井美結さんの作品、最盛期を迎え水揚げされたばかりのカツオが入ったコンテナを、水面に光が反射して白く見える様子と遠近法を使って表現した芝田翔真さんの作品、カジキの長く伸びた吻の大きさに驚き、魚の群れに突進し吻を使って獲物を襲う姿をダイナミックに描いた中尾樹さんの作品、海女さんが楽しそうに働いている姿を、にじみの技法を用いて表現した美しく幻想的な海の中に描いた山口仁日香さんの作品が入賞しました。
 中学校の部では、様々な色に変化する海と、船の動きに合わせて波打つ水面をていねいに描いた山本修史さんの作品、想像の世界をどこまでも広げ、画面の中を自由に泳ぎ回る魚たちを楽しく描いた岡田紗奈さんの作品、真珠養殖場に立ち寄ったシーカヤッカーを描き、作業する人との会話が聞こえてきそうな臨場感を描き出した柴田知昔さんの作品、網を修理する漁師の黙々と作業を続ける姿を、日焼けした横顔と熟練した手つきに注目して描いた勝田茉鈴さんの作品、家族で訪れた漁港の印象に残った風景を、独特のタッチと正確な描写力で描いた森田みのりさんの作品が入賞しました。

 最後に、この作品展を通して海と共にある三重県民の心と暮らしがいつまでも豊かでありますことと、多くの命を育む海に感謝の気持ちを込めまして審査の講評と致します。