三重県津市にある「みえぎょれん」のサイトです。「みえぎょれん」や三重の海の紹介、お魚を使った料理レシピも掲載してます。

 

2019年度・第41回 三重県海の子作品展 審査講評(三重県美術教育研究会 猪 泰介)

 第41回三重県海の子作品展に入賞された皆さん,おめでとうございます。
 また,三重県各地からたくさんのご応募ありがとうございました。海の生き物や生活への思いが伝わってくる作品ばかりで,海に恵まれた三重県ならではの力作揃いでした。
 全体的な印象として,小学校の部は海の生き物が描かれている作品が多く,その生き生きとした描き方は子どもたちの海への夢や楽しさが溢れていました。中学校の部は写実的な作品が多く,海や港の風景や働く人々へのたくましさや雄大さが強く描かれていました。

 小学校の部で三重県知事賞を受賞した紀北町立三浦小学校6年の山本莉夢さんの『今日も,ブリ大漁だ!』は,市場での水揚げの様子を迫力ある構図で描いています。莉夢さんは,たくさんのブリが網から降ろされる様子や市場で働く人々の活気がよほど印象に残ったのでしょう。その思いをしっかりした色と丁寧な筆遣いで描きあげ,見事に表現しています。
 三重県教育委員会賞を受賞した松阪市立港小学校4年の貝撥紘太さんの『大好きな青物釣り』は,大物のブリを釣り上げた時の達成感と喜びを,胸を張って堂々とした自画像で描いています。紘太さんの力強い眼差しと前面に押し出されたブリから,このときの紘太さんの熱い思いを感じ取れます。

 中学校の部で三重県知事賞を受賞した尾鷲市立尾鷲中学校2年の中崎ちひろさんの『一針,一針,思いをこめて』は,中学生とは思えない圧倒的な技術と網の表現が見事です。目立たない地面や背景のコンクリート壁まで丁寧に描かれています。中心人物からは,この人物の実直さまでが表されており,「海」と共に生きる人間の強さや尊厳が伝わってきます。
三重県教育委員会賞を受賞した鈴鹿市立大木中学校3年田中辰海さんの『出漁をまつ』は,漁船を斜め下からの難しい視点で描いています。何より,白色の使い方に目を奪われました。漁船はもちろん,雲や影,塗装の剥がれや錆びなども丁寧に描いており,この船と海との深く長い関わりが伝わってくる作品です。

 小学校の部では,カラスミの色合いを変化させることで遠近感を見事に表現した芝田翔真さんの作品,漁船を細部まで観察し,器具や設備を丁寧に描きあげた城山日歩さんの作品,スクラッチの技法を用いて,にぎやかな海の雰囲気を線描で表した中山怜実亜さんの作品,明るい色を使って亀や海の生き物を色鮮やかに表した片原和音さんの作品,地元尾鷲の郷土料理「梶賀のあぶり」がずらっと並んでいる様子を丁寧に描写し,鮮やかな朱色が映えている垣内颯太さんの作品が入賞しました。

 中学校の部では,ヴィヴィットに描かれたカッパが作品にリズム感を与え,休憩中の漁師を明るく彩っている岡ももこさんの作品,夕暮れの美しい漁港の空の色を,海面と対比させながら柔らかく表現した加藤凛さんの作品,朝焼けの中,ブリ漁をする様子を大胆な構図と細かいタッチで優しくも力強く表現した東佑丞さんの作品,漁港の静けさを落ち着いた色遣いと微かに揺れる水面を描くことで見事に表現した猪嶋怜奈さんの作品,出港の準備を待つ船を空の温かみある色合いと重ねながらドラマチックに表現した別所杏音さんの作品が入賞しました。

 最後に,この作品展を通して海と共にある三重県民の心と暮らしがいつまでも豊かでありますことと,多くの命を育む海に感謝の気持ちを込めまして審査の講評と致します。